労働相談員の部屋の見出し

 多くの労働相談を通して 感じることを書きました。


40.労働相談の大半は企業内(職場内)の不満・苦情…労働組合の果たす役割は大きい
      ・・・ 日常活動の中で把握し、
         未然防止機能と発生した場合の対応策に力を
岡本  労働相談員
 労働相談の紛争内容の大半は企業内(職場内)の不満・苦情が圧倒的に多い。
 特にその中でも「職場内の人間関係」「労働条件差別」「セクハラ・パワハラ」が主流を占めている。
 企業内で対処が十分でないと紛争が外部機関へ解決の場が移る事にことになる。紛争が外部化すると企業にとってデメリットが大きくコストもかかる。従って紛争解決にあたっては企業内での解決が最優先されなければならない。

 電話相談者へは出来るだけ企業内での解決を優先して対応するように求めているが、企業内での不満・苦情解決の仕組み(苦情処理委員会や相談窓口の設置)が十分でないケースが多い。  また、企業内の不満・苦情の解決にあたっては労働組合の果たす役割も大きい。職場での不満・苦情を日常活動の中で把握し、直属上司への申し入れや労使協議への対応も必要となる。

 組合員の意識も多様化している今日、紛争の未然防止機能のみならず、紛争が発生した場合の対応策にも力を入れることが求められている。

39.責任が重くなる。ミスした場合の賠償責任が怖いので会社を辞めたいが
      ・・・ 労基法91条は「1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が1賃金支払
         い期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない」と定めている
原  労働相談員
 昨年12月12日に39歳の男性から「すぐに、会社を辞めたいが、辞めさせてくれない。会社から、辞めるにしても、せめて1月末まで居てくれと言われた。どうしたらよいか」との相談が入った。

 辞めたい理由は「2人1組の検査業務が、来年から1人作業になり責任が重くなる。ミスしたら『今月の給料を払わない、損害賠償せよ』と言われるのではないか心配だ」ということであった。

  「解雇された。未払い賃金もある」との相談が多いことを紹介し、「あなたの相談は、贅沢な相談だ」と前置きし、「どこの会社でも、ミスをすれば、程度に応じ、就業規則に基づき制裁などそれなりの責任を取らされる。しかし、労働基準法第91条は、『就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が1賃金支払期における賃金の総額の10分1を超えてはならない』と定めている」と説明。  そして、損害賠償云々も含め、「余計な心配せず、性急に年末に辞めることなく、しっかり働き続け、その間、次の職場を探した方が良いのではないか。心配したようなことが起こったら、いつでも電話してきてください」とアドバイスした。

38.再雇用拒否 社員旅行・職場の飲み会欠席を理由に
      ・・・ 個人加盟ユニオンに加入し交渉へ
山口 労働相談員

 相談は定年後の再雇用を拒否されたが、会社の拒否理由と対応が納得できないと言うものである。相談に来たAさんは嘱託社員から数年前に正社員に登用され、通算20年にわたり同一会社で雇用されてきたが1月に定年を迎えた。

 定年後の再雇用制度に関する協定書は労働組合が締結している。第1条では次の各号該当者は嘱託として採用するとして①業務に耐えられる程度に健康であること②成績不良でないこと③嘱託就業規則の労働条件に合意する、と定めている。

 Aさんは昨年3月頃、新入社員採用時期に、「私が60歳になったら再雇用してくれないのか」との問い合わせに対し、会社は「それはそのときの話で、ただし職場の変更や減給となる」と答弁。6月には、「今の会社の業績は良いので、再雇用の話は全然無い訳ではない」とも話しておりAさんに期待感を持たしていた。

 しかし、12月に入ると、会社は「再雇用はしない。新入社員が入る。行く職場が無い。また言葉の問題もある。仕事上では問題はない」と言われ、再雇用を拒否された。

 再度、Aさんは会社幹部に再雇用を希望する申し入れをすると、会社は「健康上問題ない。成績は一般的で普通。協調性欠如なので期待できない。例として社員旅行への欠席、職場の飲み会への欠席を指摘」会社は撤回の意志が無いことを伝えてきた。

 このような再雇用拒否の理由が解雇権濫用法理に照らし社会通念上通用するのか、Aさんは個人加盟ユニオンに加入して交渉をすることとなった。


37. この一年、相談のほとんどが「いじめ・嫌がらせ」
      ・・・ 職場の人間関係再構築の役割になう労働組合
高村 豊 労働相談員
 今年の1月から労働相談ダイヤルの相談員に就いて1年が経過した。  毎月第1・第3木曜日が私の担当日になっているが、東京都労働委員会委員などの役割も持っていることから、実際に相談員として対応できるのは月に1回というのが実情である。  したがって、1年間に受けた相談電話件数はそれほど多くはないが、何故か労災の一件を除くと、残りすべて「いじめ・嫌がらせ」の相談であった。
 相談のなかには、社長自らが嫌がらせをし、社員を退職に追い込むというケースもあった。また、職場のなかで「いじめ」があるのに、上司が見て見ぬ振りをしているというケースも何件かあった。

 厚生労働省によると、2009年の職場いじめ・嫌がらせの相談件数は前年比3,517件増の35,759件で、統計を取り始めた2001年下半期から8年連続の増加となっている。  成果主義が進んだ社会のなかで、人間関係の対立が生まれ、ストレスが蔓延し、他人の立場でものごとを見ることができなくなっている人が増えている。
 今まさに、職場における人間関係の再構築が求められおり、その役割を負うのが労働組合だ。

36. 人員整理のため、巧妙な嫌がらせ
      ・・・ 法に反する仕事の強要も
板橋  労働相談員
 最近電話相談件数が少なくなった様だ。しかし潜在的には減ってはいないであろう。中でもいじめやセクハラ、不当解雇などの問題は増加していると感じる。
 ある電話では知識と経験をもって入社したが、法的に確実に違反している事案にも関わらず、その仕事を強制するのでどうしたらよいか、拒否するなら即解雇だ ― と言った内容の相談があった。なおその時は入社から14日以内で試用期間中であった。

 法に違反した仕事の内容が発覚した場合、企業は勿論だが遂行した本人は、資格を剥奪され二度とその類の仕事には携われない、といった立場に追い込まれた。
 この相談は、ある意味、高度ないじめであり不当解雇に相当する中身である。本人が法に違反してまで仕事をしたくないとして、退職する旨を打ち明けていたため、会社とのトラブルは起こさないで済ますことになったが、本当ならその会社の社会正義を追及する事が求められてしかるべき案件かも知れない。  この様な事例の他にも会社は事業が苦しくなり人員整理を目的としていじめをしかける ― 等の相談もあった。人員整理のため、巧妙な嫌がらせは見逃せない。

35. 弱い立場の労働者を苛める経営者の横暴
      ・・・ 勇気を持ってJAMの個人加盟ユニオンへ
中村  労働相談員
 景気が冷え込み、失業率が高くなると労働者の立場は弱くなる。この現象は必然だが、逆手にとって弱い立場の労働者を苛める経営者の横暴が目立っている。

 「母一人、子一人で親の介護をしているのに遠隔地に転勤命令を出された」、「重機オペレーターで二十六日稼動したのに、一日休んだら給与を振り込んでくれない」「急に夜勤を多くさせられた」ほんの一例である。
 話しを聞くとほとんどが会社の経営が厳しい様である。労務費を削減したい、高い給料の人を辞めさせたいの思惑が見え透いている。こんな状況を悪用する経営者の横暴を許すわけにはいかない。

 労働組合は無い、上司自身も弱い立場なので上司に相談してもほとんどの場合解決の役には立たない。他に相談できる人も無く悩んでいる人が、ハローページやネットで検索しJAM電話相談ダイヤルに電話をしてくる。その結果、相談だけでは解決の見込みはなく、本人と一緒に経営者と交渉し解決の方法を探るのが最善と判断する場合がある。
 このような時、JAM個人加盟ユニオンは相談者と共に出向き理不尽な経営者と団体交渉を行っている。しかしまだまだ加入者は少ない。泣き寝入りせず勇気を持って経営者と対峙できる環境作りにさらに勤しんでいきたい。

34.突然の解雇通告
      ・・・ まず明確な解雇理由などの確認を
岡本  労働相談員
 労働相談ダイヤルを担当して、10 カ月が経過しました。
 この間、5件の相談が寄せられました。内容は解雇問題が大半です。「業務怠慢」「営業成績不良」などの理由で「出社したら突然、解雇通告を受けた、解雇を撤回させてほしい」などの相談です。

 労働契約法第16条には「解雇は客観的な理由を欠き、社会通念上、相当であると認められない場合は無効とする」と規定され「社会常識から見て合理的理由による解雇以外は法的には無効」とされています。

 相談者の企業に労働組合がない場合が多いので、まずは「明確な解雇事由を会社に確認」「退職証明書の請求、労働契約書・就業規則の内容確認」等々の助言と、やむなく退職(自己都合)を合意している場合、撤回は無理だが解雇事由が不当なら、争うことができるので、JAM個人加盟ユニオンへの加入をすすめています。  この事例のように、個人では解決できない問題が多く企業内で散見されます。

 JAMは、働く者の権利を守るため、未組織で弱い立場の人達を組織化する社会的責任があります。労働相談員として常にこの事を忘れず相談に対応していく覚悟です。

33. 労災…その場でその時に
      ・・・ すぐ周りの人に伝え、病院へ行き受診を
原 労働相談員
 担当している月曜日の午後、「派遣先の会社で冷凍庫内の作業に従事し、手にしびれや痛みが出ているが、これって労災になるんですか」と派遣労働者から、相談があった。

 発症したのは、休み前の金曜日の作業中とのこと。会社からは、無理をしないようにと言われていたが、流れ作業でもあり、発症したことを誰にも言わず我慢して作業を続けたそうだ。

 発症時点で、作業現場で、他の人に報告をしなかったり、病院に受診するのが、何日も経ってから、というケースで、現認者がいない、業務との因果関係が明らかでないなどとして労働基準監督署長が、業務上と認定しないことが少なくない。

 労働災害の認定には、「業務遂行性」と「業務起因性」の有無が問題とされることから、相談者に対して、本来、その場で、その時に、発症したことを、周りの人に伝えること、すぐ病院に行き、顛末を説明し受診することが重要と説明したが、どちらも実行していないということであった。

 念のため、派遣労働者の労災補償責任は派遣元が責任を負い、派遣先も安全配慮義務があることを伝え、改めて、すぐ病院に行くこと、派遣先、派遣元にその旨を報告し労災申請手続きを進めるようアドバイスした。

34. 自分の意思に反して退職届を書かされた
      ・・・ 退職強要で無効。会社主張も手続きも合理性なし
山口  労働相談員
 相談の内容は、ある日本社に来るように言われ、会社に行くと管理者から、会社の集会への無断欠席、無断欠勤、現場での顧客とのトラブルなどを理由に、自分の身の振り方をどうするのかと詰め寄られ、頭が真っ白になり意思に反して退職届を書いてしまったというものである。

 面接をして本人から事情を聞くと、その場の雰囲気に耐えられず、退職届を書いてしまったと、会社の言っている理由と本人の主張との相違が明らかになってきた。

 ユニオンに加入してもらい会社と交渉したところ、会社は解雇ではない、本人が自発的に退職届を提出したものであるから自己都合との主張を繰り返すだけである。

  退職強要は、退職勧奨に応じない労働者に対して、使用者が半強制的にまたは執拗に退職を、〝勧奨〟することによって、ついに労働者がその意に反して退職の意思を示すことである。

 本件は頭が真っ白になる雰囲気の中で意思に反して書いた退職届なので無効といえる。

 会社の主張する無断欠席、無断欠勤、現場での顧客トラブル理由に本人に退職を求めるのであれば、それは懲戒解雇となる。その場合は就業規則に基づく懲戒解雇の手続を経なければならないが、会社は一切そのような手続をしていないのである。

 会社の主張も手続にも合理性が認められないので、今後も組合員の気持ちを汲みつつ解決に向け交渉を継続している。

34. 組合を結成していなければ全員泣き寝入り
      ・・・ 昨年労働相談から本訴・復職の和解へ
高村  労働相談員
 JAMの労働相談ダイヤルは、労働相談を通じた未組織の組織化が大きな目的の一つでもあります。そのためには、電話だけではなく、できるだけ相談者に直接会うという対応が必要だと思っています。

 JAM東京千葉は、昨年、今年と各一件の裁判を起こしました。いずれも、労働相談を通じて新たに組合を結成し、そのなかで発生した組合役員に対する解雇問題です。二件とも東京地裁で「復職」での和解となりました。

 本訴を行ったケースは、JAM東京千葉に労働相談があった時点で、既に相談者は不当な解雇・自宅待機処分を受けていました。もし、組合を結成していなかったら、全員が泣き寝入りで終わっていたことは明らかです。

 私たちが組織拡大に取り組むのは、組織を大きくしてJAMの社会的発言力を高めるだけではなく、組合のない職場で働く弱い立場に置かれた人たちを組織化して健全な労使関係を確立し、働く者の権利を守っていくことが私たちの社会的責任でもあるからです。その気持ちを忘れずに役割を果たしたいと思います。

33.心ない経営者の度を越えた労働者イジメ、増加の傾向
      ・・・ 労働審判の申し立てが急増
中村  労働相談員
「経営状態が厳しいので来週で退職と突然言われた」
「店長が代わり、髪の毛が茶色いから黒くしろ。出来ないなら解雇だ」
「工事のミスはお前の責任だ。損害は給与から天引きする」

 JAMの労働相談ダイヤルは、労働相談を通じた未組織の組織化が大きな目的の一つでもあります。そのためには、電話だけではなく、できるだけ相談者に直接会うという対応が必要だと思っています。

  JAM東京千葉は、昨年、今年と各一件の裁判を起こしました。いずれも、労働相談を通じて新たに組合を結成し、そのなかで発生した組合役員に対する解雇問題です。二件とも東京地裁で「復職」での和解となりました。

 本訴を行ったケースは、JAM東京千葉に労働相談があった時点で、既に相談者は不当な解雇・自宅待機処分を受けていました。もし、組合を結成していなかったら、全員が泣き寝入りで終わっていたことは明らかです。

 私たちが組織拡大に取り組むのは、組織を大きくしてJAMの社会的発言力を高めるだけではなく、組合のない職場で働く弱い立場に置かれた人たちを組織化して健全な労使関係を確立し、働く者の権利を守っていくことが私たちの社会的責任でもあるからです。その気持ちを忘れずに役割を果たしたいと思います。

「実際の労働時間と異なる時間をタイムカードに打刻させられる」
「再契約をしたら、同じ給与なのに今回から交通費が含まれると言われた」
「仕事量が多く、残業していると、仕事が遅い、能力が無いと罵倒する」
「残業手当が付いていないと言うと、残業代込みの契約だと言う」。

 上記の内容は、私がこの半年間に受けた相談の一部である。弱者に対する経営者の横暴を訴える相談が多くなる傾向だ。特に中小経営者の労働法を無視した労働者イジメは度を越している。

 現在の不況による雇用状況が更に助長しているようだ。労働者個人と会社との間で起きた紛争の解決を図る労働審判の申し立て急増がそのことを裏付けている。制度がスタートした2006年の約870件から、2008年は2050件に増え、2009年は8月時点でその数を上回った。不況の影響で解雇や賃金カット等のトラブルが増えているためと見られるが、心ない経営者から労働者を守るために、相談ダイヤルのベルは鳴る。

32.労働相談運動の統一を
     ・・・ 労基法も守らない経営者をなくしていくために
遠藤  労働相談員
 労働相談の事務局に関わって4年になる。具体的に何をしてきたかと言われるとなんとも心苦しい。この「意見欄」で多くの相談員が、労働者の置かれている様々な実態と心無い経営者の姿を書いている。

 相談者の話を聞いていると、JAMだけでなくいろいろなところに相談していることが分かる。ろうどう110番や、地方連合の何でも相談室、行政組織の労働相談センター、各産別組織など様々な団体が労働相談を行っている。労働相談に関わる団体や個人はどのくらいいるのかと思う。もし、これがまとまった組織として活動できれば、どれだけの力と影響力を持てるかと考える。少なくとも連合とその構成組織では統一した運動体として中央・地方を含め「労働相談センター」を作ってもらいたいと思う。

 政権交代で民主党政権(連立政権)ができた。労働界にとって「労働者保護、雇用環境改善の政策実現」や「労働組合の社会的地位の向上」に向け大きなチャンスといえる。連合を中心にその「力の発揮」が試されている。

 未組織労働者や中小零細企業に働く労働者の権利を守り、労基法も守らない経営者を無くしていくためにも、運動の統一が求められている。


31.年次有給休暇の取り消しで損害賠償
    ・・・ 1ヵ月前に申請し許可。
        突然取り消され旅行計画をキャンセル、10数万円の損害
山口  労働相談員
  「年次有給休暇を取り消され、損害が出たので損害賠償請求できますか」との相談があった。奥さんからのもので、電話口では悔しくてどうしようもないという口調が伝わってきた。

 家族で数日間の旅行を早くから計画し、1カ月くらい前に夫は年次有給休暇を申請。許可が出たので旅行の手配を済ませ、代金も払い込み旅行当日を楽しみにしていた。

 ところが旅行日の数日前に会社から理由も伝えられず、年休は認められないと時期変更を突然通告され、泣く泣く旅行計画をキャンセル。解約に伴う違約金が10数万円発生し、会社事情による解約なので、会社に損害賠償を請求したいと言うのである。

 会社の年休の時期変更は、その日に休暇が集中し事業に差しさわりがある等の場合、別の日にするよう変更を命じることができる。
 事業に差し障りがある場合とは、事業所の規模やその労働者の担当している職務に照らし、生じる影響の程度と、「代わりの者を確保できる可能性」を総合的に考慮する努力は求められる。

 一度許可し、その後の時期変更で発生した損害を労働者に全額負担させるのは酷であり、会社が全額または一部でも補償するのが筋ではないか。


30.新政権、労組として早期の結果を求める
    ・・・ 財源の確保とスピードが重要
板橋 労働相談員
 労働電話相談を担当して3年以上が経過した。毎週水曜日を担当している。
 昨年の今頃はリーマンショックによって電話相談でも、派遣切りや解雇の問題が多数寄せられていた。また年末の派遣村の話題も加わり労働者派遣法のあり方も大きな社会問題とされていたのだが、総選挙や政権交代の話題に埋もれて、昨今では派遣切りの報道や課題はメディアでも取り上げられる回数は極端に減っている。しかし、景気回復の遅れや円高による雇用環境の悪化は、有効求人倍率を見る限り最悪の水準に落ちこんでいる。

 鳩山民主党政権では緊急雇用対策本部を立ち上げ、厚生労働省を核に多くの対策を掲げているようであるが、自民党の時代に取って変わり我われ労働者が待ち望んだ政権が誕生したのである。財源の確保はもとより、対策を実行に移すまでのスピードも重要であり、期待は大きい。

 労働者派遣法の見直しや雇用の受け皿としての介護分野への拡大と、介護従事者の賃金水準の引き上げなど課題は山積だと思われるが、労働組合としての期待に応える政権として早期に結果を求めたい と考えているがいかがであろう。

29.歴史の歯車が回った
    ・・・ 人間の尊厳を取り返す闘いが始まる
嶋田 労働相談員
 歴史の歯車が音を立てて回った。幾つかあった政権交代とは確実に違う、国民の意思がこれほど明確に示された政権交代は無かった。それだけに民主党を軸とした政権に対する国民の期待は大きい。

 また、労働運動が勝ち得た初めての政権でもある。労働者の期待も大きい。とりわけ雇用環境の改善を図る法制度の見直しは急務である。働く場所と継続される安心の雇用があってこそ少子社会からの転換も、内需の拡大も出来るのである。

 「労働は商品ではない」とするILOの精神は、小泉改革以降の日本社会から無くなっていた。人間の尊厳が保障された雇用環境は皆無に近い、労働相談の内容がこの事を示していた。取り戻す闘いがこれから始まる。

 ただ、自公政権の負の遺産を抱え込んでスタートする新政権の前途は多難である。私たちは、性急に結果を求めるのではなく、新政権を支える立場に立ち、見守りながら、国民の間にその理解を広めなければならない。労働運動も政治も多数に支持される限り過ち無い前進ができる。


28.契約更改で労働条件が空白の労働契約書を渡された
    ・・・ 個人で加盟できる労働組合と都労働局を紹介
三浦 労働相談担当
 労働条件が空白の労働契約書を渡され、署名・捺印を促された、という大手食品メーカーの営業所勤務の契約社員から相談があった。

 一年更新の更改期となり、正社員の上司から渡されたものだが、その書面には明示義務があるはずの労働条件が空白となっていた。尋ねると「ここの会社は上場企業だから変なことはしないから」と言う。納得がいかないので態度を留保した。
 以前にも、印鑑を会社で預からせて欲しいと言われ、その時も「一流会社だからおかしなことはしないから」と言われたという。
 相談者は、この会社に栄養士として就職し、実績を積み管理栄養士になるという目標を持っていたが、上司から営業に職種の転換を迫られてもいた。

 個人加盟の労働組合に入り団体交渉で解決できること、東京都労働局に相談し、会社に助言・指導・斡旋をしてもらうことができるなどの助言をした。


27.非正規で解雇、仕事見つからず…病気だが医者にかかれず、車の中で寝泊まり
    ・・・生活保護受給手続きを教えた
山口 労働相談員
  昨今の電話相談は切羽詰まって藁にも縋りつきたい思いで掛けてくることもある。その背景は、昨年、世界金融危機が発生し金融不安の増大、大幅な株下落と円高の影響は実体経済にも波及。輸出の大幅減少と個人消費が低迷し、製造業では減産態勢で製造ラインの縮小や一時停止、従業員の削減となり、非正規従業員の契約途中での解雇や再契約拒否へと繋がっている。

 私が受けた電話は北海道からでした。中年男性で非正規従業員として永年自動車関連で掛川・日野・藤岡などで働いてきたが、昨年夏に解雇されて以来、本州の会社に再就職しようと努力したが仕事は見つからず、北海道に戻ってきた。北海道では職種も限定され、今までの経験や技術を活かす仕事が見つからない。今どんな生活をしているのですかと問えば、自動車の中で寝泊りして仕事を探しているとのことでした。長年の酷使もあり持病があるがお医者にも掛かれないと涙声で応えてきた。このような相談は初めてなので、大変ショックを受けた。

 労働者も厳しい生活を強いられており、電話を通じて切々と訴えてくるが、私自身が的確な回答をできないもどかしさを感じた。相談員として、話を聞くことに徹したが、話すことにより気持ちが楽になったと言ってくれたのが救いであった。当面は生活保護を受給して病気を治すことが最重要ではないかと伝えた。生活保護の手続を教えて電話を終えたが、暗澹たる気持ちの一日となった。


26.労働基準法違反がなくても直ちに解雇が有効とはならない・・・・解雇権の濫用に留意
    ・・・ 電話だけでは詳しく聞き出せないこともある
板橋  労働相談員
 電話労働相談を担当して3年になる。毎週水曜日を担当して様々な内容、種類の相談を受け付けてきた。
 金融不安をきっかけとする未曾有の不況で、派遣切りを始めとする雇用問題が多数寄せられるものと考えていたが、以外に多くない。当初から不当解雇の問題や賃金の未払い、予告手当の支払い等の相談が多かったのである。

 労働相談に寄せられる相談のほとんどは未組織の労働者からである。10人未満の企業や小売店などで働き、労働基準法はもとより、法的知識を持っていないことがその背景にある。

 例えば、解雇に関する労働相談で、30日間の解雇予告期間が置かれ、または30日間の予告手当が支払われたからといって、労働基準法に違反が無いからといって、それだけで直ちに解雇が有効と判断するのは大きな誤りであり、解雇の効力に関する解雇権の濫用に留意する必要がある。この場合、すでに多くの裁判例の積み重ねがあり、相談の内容を正確に聞き取り判断することが必要となる。

 現状の電話相談では必ずしもそこまでの詳しい内容が聞き出せないこともあり、本人に来てもらって対処することになるのだが、実際に来ることは極めて少ない。電話相談の限界を感じる昨今である。


25.労働組合のための労働法
    ・・・ JAMの顧問弁護士の宮里先生著
嶋田 労働相談員
 都心の日比谷公園に「年越し派遣村」が出現した。所持金を65円しか持っていない労働者がいたという、これが派遣労働者を襲っている現実だとすると恐ろしい。

 社会全体の喫緊の課題であるにも関わらず、企業は社会的責任を感ずる事無く、更に派遣労働者から正規社員にまで人減らしを広げようとしている。  電話相談には解雇を巡る相談が増大するだろうし、個別企業でも紛争の増大が予測される。

 JAMの顧問弁護士の宮里先生が「労働組合のための労働法」という本を昨年秋に労働教育センターから出版した。定価は1700円、時宜を得た本である。4章45項目に整理され、自分の関心ある項目の何処から読んでも疑問に答えてくれる編集は労働相談に欠かせない実務書である。

 なお、「労働法」はどの様な考え方から労働者の権利を保障しているのか、労働組合の立脚の原点は何処にあるのか、それらにも多くの示唆を与えてくれる内容は組合員教育にも適切な書である。


24.組合員のほとんどは労働相談を通じて加盟
    ・・・ 個人加盟ユニオンJAM東京千葉
田中 労働相談担当
 前回に引き続き、個人加盟ユニオンJAM東京千葉の活動内容や組織の概要について紹介したいと思います。

 ユニオンの発足は2000年11月。以来、労働相談や団体交渉、労働相談情報センターや東京都労働委員会との情報交換などの活動を行ってきました。  現在組合員数は40人で、JAM東京千葉の役員OBと書記局の21人で執行委員会を構成し、一般組合員については19人を組織しています。

 組合員のほとんどは労働相談を通じて加盟してきた人達です。その人数は、発足から累計で50人となります。しかし、その多くは相談してきた事案が解決してしまうと辞めていってしまうというのが悩みの種です。また、残念ながら、これまでユニオンを通じて労働組合をつくったという例はありません。

 しかし、組合員の中には「組合をつくりたい」ということで継続して加盟している人もいますし、「60歳までは残る」と言っている50歳代の男性もいます。

 また昨年は、あるゴルフ場のキャディさんが、同僚のキャディさん一人を誘って加盟してきました。いつかは、個人加盟ユニオンから労働組合をつくっていきたいと思っています。


23.賃金未払いで団交を行う
    ・・・ 口約束での労働契約はトラブルの元
平木 労働相談担当
  賃金未払いの相談に来てJAMに加入した組合員の案件を紹介します。
<経過>
 新聞購読を電話で勧誘し購読契約一件につき数千円の報酬を得ていたが、新聞販売店の配達ミス(配達忘れ)によって客に購読をキャンセルされ、報酬が出なくなった。納得がいかないので相談に来て個人加盟ユニオンJAM東京千葉に加入し組合員となる。以下はJAMが会社と団体交渉した主な論点です。

<社長>
 契約では一件数千円の報酬は出るが、お客さんがキャンセルした場合は、支払わないこともある。本人には説明してある。

<本人>
 そんなことは聞いていない。

<JAM>
 採用時に口頭で説明し、文書で確認すべきである。また就業規則もみんなが見られる所に置いておくべきである。社長はこの仕事を業務委託と言っているが、実際は事務所に人を集めて業務を指揮しているので業務委託ではなく通常の雇用関係である。労基法24条で賃金は、現金で本人に直接支払い、貸付などがあっても勝手に控除できない。給料(賃金)である報酬分は全額払って控除はしないように。

<社長>
 わかった。今度の給料は、報酬分全額払う。
  と一応決着となりましたが、労働相談の多くに共通しているのは、採用時の労働契約内容が文書で明示されず口約束であいまいとなり、実際の労働条件と違ってトラブルとなっている場合が多くあることです。


22.入社時の約束と違う・・・「分からない」人たちが増えている
    
・・・非正規労働者の組合加入へ強力な取り組みが必要
鈴木 労働相談員
 最近の労働相談では採用直後に発生したトラブルについての相談が多い。賃金・休日・残業の取り扱い等々、入社時の約束と違うがどうしたら良いか?中には、口頭で入社の約束をしたが一晩考えて断りの電話を入れたところ、「貴方のために駐車場を契約したから損害賠償金を請求する」と言われたケースもあった。

  20代から30代の若い人たち(当事者の親からの相談もある…)からの相談が圧倒的であるが、ほとんどが雇用契約書を交わすことなく、また、就業規則の提示・説明もないまま、口頭で労働条件の説明を受け、即入社の約束をしているケースである。

 労働基準法第15条で「労働条件の明示」が定められ、施行規則第5条では「書面の交付」が定められているが、「法律は分からない」、「何処に相談したら良いのか分からない」、人たちが増えているように思える。

 雇用形態の多様化 → 非正規労働者(パート社員、契約社員、派遣社員)の増加 → 組合組織率の低下の構図がこのような人たちが増加している要因ではないだろうか?
 非正規労働者の組合加入への取り組みを強力に推進して行く必要があると思う。


21.採用時、労働条件を安易に口約束・・・トラブル発生時に解決を複雑化
    ・・・ 労働条件の書面での明示は、法に定められ、
            パート・アルバイト・臨時雇用なども含みます

山口  労働相談員
  電話労働相談で受ける内容は、新聞の求人広告や就職雑誌の募集案内をみて応募し、実際働いてみると給与が低い、労働時間が長い、休憩時間が取れない、年休を取得させない等、様々な事案が持ち込まれてきます。
  それらの相談に共通しているのは、採用時の労働条件が文書で明文化されておらず、口約束であったことが、後々のトラブル発生時には解決を複雑にしているといえます。

  相談者は文書での提示を求めなかった理由として、どうしても就職したかったから文書でくださいとは言えなかったと言います。様々な事情で、就職を急いでいる気持ちは理解できますが、あまりにも安易過ぎると思います。

 労働契約とは、「労働者が報酬を得て労働を提供することを約束する、労働者と使用者との契約」のことを言います。
 ここでいう労働者とは、
①職業の種類を問わず
②事業又は事務所に使用され
③賃金を支払われる者をいい
正社員に限らず、「パートタイマー」・「アルバイト」・「臨時雇用」等の名称で呼ばれる者も含みます(労働局監督課見解)。

 労働条件の明示(第15条)は、労働基準法に定められています。それには使用者は①労働者を採用するときは、賃金や労働時間などの労働条件を書面などで明示しなければならない。②明示された労働条件が事実と相違する場合には、労働者は即時に労働契約を解除できる。

  さらに、第15条でいう労働条件の明示の項目を厚生労働省令で定めており、必ず明示しなければならない労働条件として、(1)労働契約の期間(有期労働契約に限る。期間の定めがある場合はその期間は3年を超えないこと)、(2)就業の場所や業務内容、(3)始業・就業の時刻、所定労働時間を越える労働の有無、休息時間、休日、休暇、交代制勤務の場合は就業時転換に関する事項、(4)賃金の決定・計算・支払の方法、締切りや支払いの時期、昇給に関する事項、(5)退職に関する事項、(6)~(11)項は省略。

  この内容は、最低限必要な重要事項ですので、募集内容と実際の採用条件が相違していないか確認することが大切です。トラブルが発生し、使用者と交渉する時には、この労働契約書が有力な証拠となりますことを、心に留めておいて欲しいと日頃から痛切に感じています。

20.格差社会
    ・・・ 安易な生活と労働環境を求め過ぎていないか
板橋 労働相談員
 格差社会と言われはじめたのは何時の頃からだろう。いや、昔も今も変わらず格差はある。都市部と農村部の問題や賃金においての格差は昔から言われてきている。また、雇用問題においては就職氷河期といわれた時期も循環して巡って来ている。なのに今格差の問題は社会の現象としてあらゆる場面で論議されっている。社会を震撼させた秋葉原の無差別殺人事件においても格差社会の一面として取り上げられた。

 社会生活としての格差は、社会人としての生活を始めた段階において、はっきりと生じる事を自覚しなければならない。私たちは生活の糧を得るため働く先を求めるが、そこには正社員として働くか、非正規雇用として働くかによって社会保険制度の適用が違ってしまうからである。就職氷河期だからと言って、社会保険制度が適用されない環境に置いて働くことを諦めてはならない。

 格差社会とともに「勝ち組負け組」や「ワーキングプア」と言われる社会問題も多くの課題を含んでいると思うが、労働電話相談に寄せられる賃金や雇用関係にまつわる相談の多くが、根底において非正規雇用問題があるのは否めない。

 現在の雇用環境は、バブル後の不況で賃金ダウンと雇用不安、配転や出向問題等々を経験して定年に至った、我々団塊の世代でも、厳しさは実感できるが、あまりにも安易な生活と労働環境を求め過ぎていないか。と考えるがいかがであろう。

19.職場での心の悩み、増加の傾向
    ・・・ カウンセラーとの連携を模索へ
藤井  労働相談員
 労働相談ダイヤルに寄せられる電話の中で最近、労働条件に関する相談、労働条件問題だけでなく仕事への取り組み方、職場環境に対応できないというような心理的な内容の悩み相談が来ることが増える傾向にある。

  労働環境も業務内容も大きく変化し、個々人の働き方、能力がますます問われる時代になって久しい。企業業績も右肩上がりから右肩下がりとなるところも多く、成果主義、目標管理制度がますますシビアに管理される時代になってきている。 この環境に多くの人は必死に対応していると思うが、そうでなく職場の人間関係、コミュニケーション等がうまく取れなく、孤立してしまっている人も増えているのではないだろうか。 こうした電話相談は、具体的な労働条件の相談とは異なり、心の中の悩みであり、電話で内容を把握していくことがかなり困難である。しかし、労働条件の相談ではない労働相談ダイヤルの領域外であると切ってしまうこともできない。

 企業の中でもこうしたカウンセリング制度を設けているところもあるが、なかなか会社内で相談することも難しいと思う。かといって我々がこうした産業カウンセリングのような専門知識があるわけではない。こうした現象、相談に対応し、専門化のカウンセリングに導けるような知識を相談担当員も持つ必要があると感じている。

  先日、こうした産業カウンセリングを行っている方と接する機会があり、話を聞く中で強く感じた。「あのひとは何を言っているかわからない、変な人、やる気が無いから根性が無いから」ということでかたずけてしまいがちだが、こうした事象の中には障害があってこうした症状になっていることがあるとのこと、そのひとつが注意欠陥/多動性障害(ADHD)とのこと。こうしたことをある程度理解したうえで相談を受けることも必要になってきているのではないだろうか。

  相談の内容によって、こうした機関への紹介などの適切な対応ができる体制、カウンセラーとのネットワーク化を今後、研究して行くべきと考えている。

18.退職したら損害賠償を請求された
    ・・・ 一切応ずる必要のないことを指導
糸賀  労働相談員
  理由不明のまま唐突に役職から降格させた。このやり方に嫌悪し不信が高じ正式に手続きを行って退職した。直後経営側より、退職により損害を受けたとして根拠のない賠償金29万円を請求された。自分には過失、不正等全く無くこの賠償請求にどう対応すべきか。

 これが寄せられた相談内容であった。相談者は有料老人ホームに介護主任として勤務していた女性で、低賃金、休暇取得が困難な厳しい労働条件と苛酷な介護現場で一途に職責を果たしてきたと話された。しかし言外には多額の賠償請求に対する精神的動揺と不安に陥っていることが察せられた。
 
 問題の発端となった降格は相談者が転職の動きをしたことに対する制裁で、損害賠償は他の職員の転職足留めを意図したのではないかと推察出来る。仮に事実とすれば経営側の行為は憲法の職業選択の自由に反し、損害賠償免責を定めている民法に抵触する。

 この行為は雇用の主従意識にたった権利濫用の不当な行為と言える。今回の相談は稀な事例であるが、非正規雇用の拡大、労働条件の企業間格差の進化等の労働情勢を背景に今後退転職に伴う労働移動が増えることが予想され、この事態をめぐり新たな労働問題として顕在化するのではないかと一面で懸念される。

 相談者には、経営側の損害賠償請求に対しては一切応ずる必要のないことを指導し本人から安堵したとの気持ちが返されてきた。

17.年俸制適用労働者の 時間外労働割増賃金
山口  労働相談員
 JAMの電話労働相談には多岐にわたる労働契約上のトラブルが持ち込まれるが、扱った案件で、印象に残っているのは「年俸制」契約で採用された労働者が、未払い残業代の請求を求めて相談に来た案件である。

 面談して、採用された経緯や就業形態、管理職としての裁量権の有無等を聞き取り調査をした結果、いくつかの契約上の問題点が見えてきた。契約書には、年俸契約として年俸金額は記載されているが、「残業相当分の時間と金額」が記載されておらず、不明であった。また、仕事上の指揮監督権は会社が持っており、管理職としての権限と裁量権は著しく制限されていることなどが判明した。

 相談者の労働債権である未払い残業代は、請求権のある2年間に遡及して約300万円となるので、個人加盟ユニオンに加入してもらい、会社との団体交渉を行った結果、会社も労働契約書の不備を認めた上で、組合員の就業中の問題点も指摘、3回の交渉を重ねた結果、和解金を支払うことで収束したのである。

 年俸制適用労働者の時間外労働割増賃金との関係は、一般的には、年俸に時間外労働等の割増賃金が含まれていることが労働契約の内容であることが明らかであって、割増賃金相当部分と通常の労働時間に対応する賃金部分に区別することが出来、かつ、割増賃金相当部分が法定の割増賃金額以上支払われている場合は労基法第37条に違反しないと解される。

 従って、「年間の割増賃金相当額に対応する時間数を超えて時間外労働を行わせ、かつ、当該時間数に対応する割増賃金が支払われていない場合は、労基法第37条違反」となる。
 


16.労働審判制度 今後の充実を
    電話相談から労働審判制度への道など
小柳  労働相談員
  2007年4月にスタートした労働審判制度は、この機関紙に制度の概要と1年半経過の実績と評価が何度か取り上げられているので、ご存知のことと思います。問題は今後の更なる充実と社会にとって有意義な機能を発揮するために何が必要かと言う観点が重要となってきました。

 特に労働市場の流動化の中で、未組織労働者や中小零細企業に働く労働者にとって、労働者の正当な権利を守り、一方的な経営側の主張を退け、納得のある解決を図るために労働審判制度が機能することが求められる。このためには、労働者が各地方裁判所に「申立人」として、容易に申請し、労使対等の原則で短期間且つ経済的負担を極力抑えた形で審議できる態勢が求められる。

 この労働相談ダイヤルに電話してくる労働者やその家族は、解決までの長い道のりを先ず心配し、会社側との交渉による精神的な負担、そして経済的負担を一番心配していることは当然である。

 その解決のためには、電話相談から労働審判制度への道を検討し、具体的な体制整備に着手する必要があると考える。その中では、人的充実が一番であり、労働審判制度の「代理人」にはJAMの人材が活用されることが望まれる。

4月にスタートした労働審判制度は、この機関紙に制度の概要と1年半経過の実績と評価が何度か取り上げられているので、ご存知のことと思います。問題は今後の更なる充実と社会にとって有意義な機能を発揮するために何が必要かと言う観点が重要となってきました。

 特に労働市場の流動化の中で、未組織労働者や中小零細企業に働く労働者にとって、労働者の正当な権利を守り、一方的な経営側の主張を退け、納得のある解決を図るために労働審判制度が機能することが求められる。このためには、労働者が各地方裁判所に「申立人」として、容易に申請し、労使対等の原則で短期間且つ経済的負担を極力抑えた形で審議できる態勢が求められる。

 この労働相談ダイヤルに電話してくる労働者やその家族は、解決までの長い道のりを先ず心配し、会社側との交渉による精神的な負担、そして経済的負担を一番心配していることは当然である。

 その解決のためには、電話相談から労働審判制度への道を検討し、具体的な体制整備に着手する必要があると考える。その中では、人的充実が一番であり、労働審判制度の「代理人」にはJAMの人材が活用されることが望まれる。   


15.退職は2ヶ月前申し出と契約書に明記、2ヵ月後でないと退職できない?
    ・・・>退職届提出後2週間で可能
鈴木  労働相談員
 2007年10月からJAM労働相談を担当して2ヶ月半が経過した。
 直接電話相談を受付けたのが3件、他の相談員が受付けて後日相談者が面会に来られて一緒に対応したのが2件とまだまだ経験は浅い。

 直接電話相談を受付けた中に、20代前半の女性、勤めて3週間、人間関係が上手くいかないので退職したい、しかし、契約書に「退職する場合は2ヶ月前に申し出る事」と明記してあるので2ヶ月先でないと退職できないのか?という相談があった。

 聞いて見ると、「就業規則は見た事もない、入社時に説明も受けていない」とのことであった。
 「退職届を提出しなさい」「契約解除について法律で定められているので、2週間経過すれば退職できますよ」「働いた日数分の賃金は貰いなさい」とアドバイスした。

 3週間で退職の決断とは現在の世相を反映した若者の「割り切りの早さ」の一例か?と思いながらも、採用時に労基法で定められた最低限の説明義務を果たしていない会社がまだまだ沢山あるのだろうか?と考えされられる案件であった。

 2ヶ月半の短い期間ではあるが、相談件数が少ないな? こんなものか? と思いつつ、微力ではあるが、立場の弱い人達の手助けとして問題解決に向けて労働相談員として努力をしていきたいと考えている。  


14.労働審判制度、わずか1年4ヶ月で1,681件
森成  労働相談員
  個別労働紛争の増加に伴い、労働紛争処理を「迅速・適正・かつ実効性」を高めるため、労働審判制度が2006年4月1日から開始されました。

 労働審判制度とは、解雇や残業代の未払い・職場での嫌がらせなど、トラブルが生じ当事者間で解決が困難な場合、いずれか片方からの申し立てで解決することができる制度です。

 申し立て先は、自宅または勤務先を管轄する地方裁判所が便利かと思います。
 申し立てた事件は、第1回労働審判の期日が設定され、それまでに相手方から答弁書を提出させ、労働審判官(裁判官)と2人の労働審判委員(労働者側推薦人と使用者側推薦人)の3人で争点整理をし、両者出席のもと第1回審判委員会を開催します。

 これまで決着を見た1,367件の審判委員会の回数を見ると、1回が284件で20.8%、2回が500件で36.6%で概ね2回で6割近くが決着を見ております。

 また、調停成立と労働審判の状況では、調停成立が947件(69.3%)で圧倒的に多く、労働審判は267件(19.5%)となっております。

 ところで、労働審判の申し立て件数ですが、制度が2006年4月1日にスタートして、今年の7月31日までの全国の総事件数は1,681件。新制度スタートにしては大変な数となっており、制度の浸透と同時に申し立て件数が年々増えていくものと思われます。
     


13.賃金未払いや不当解雇の根源にイジメ
板橋 労働相談員
 いじめ・・・これは決して子供の世界の話だけではない。職場のいじめをパワハラ(パワーハラスメント)という。

 2007年の6月から労働相談を担当して一年を経過した。この間、賃金の未払いや不当解雇の相談が多いように感じたが、その根源は職場でのいじめがあったように感じている。電話相談にかけてくる労働者は非正規社員と言われる臨時、パート、契約社員などの勤務経験の短い人達が圧倒的に多い。勤め始めて1~2週間あるいは1~2ヶ月で、仕事のやり方や上司からの指導、指示から生じる様々な行き違いから、「明日から出てこなくていい」と言われて、その間の賃金未払いや解雇に至るケースでは、いじめが原因となっている場合が多いからだ。

 もちろん使用者側が一方的に悪いわけではないが、言葉の暴力はいじめである。

 また、労働者側の辛抱にも問題がないわけではない。使用者側と十分話合いを重ねることによって解決する方策があることを説明し、雇用が継続できることをアドバイスをするが、多くの相談者は職場を辞めることになる事例が多いのが現状である。労働者の働く権利が最大限守られるように今後も相談に応じていきたい。       


12.労災隠し・・・・経営者としてあるまじき反社会的行為だ
糸賀 労働相談員
 労働災害に関する相談が寄せられている。
ーなどなど。

 相談内容は異なるが、災害によってもたらされた精神的苦痛、傷病による身体の痛み、雇用不安と生活問題など、労災特有の問題が複合し事態は深刻である。

 労災防止と職業病予防は産業政策の重要な一翼であり、労働者の生命と健康を一体化した労働安全衛生法、労働者災害補償保険法、労働基準法などを重層的に制定した法制はそのための確立された体制である。罰則を付した使用者の安全配慮義務と労災保険への強制加入は労災の全責任が経営に帰することを示している。

 それにもかかわらず、安全対策を怠り、労災発生に伴う厳しい行政指導と保険料負担増から逃れるため労災隠しをはかり労働者を犠牲にする行為は、経営者としてあるまじき反社会的行為だ。ましてや被災者に雇用不安を与える一方的行為は決して許されない。

 相談者には労基署に赴き一連の事実経過を明らかにし行政指導の元に労災申請をすることが最善策であることを強調している。       

11.雇用契約書を交わしていないケースが多い
山口 労働相談員
 2006年12月21日に発表された労働組合基礎調査では、全国推定組織率は18.2%(前年比0.5%減少)、労働組合員数は10,040,580人で減少幅は縮小したが98,000人減少した。雇用者数は5,517万人と増加傾向での組織率18.2%の意味は深刻である。

 一方、非正規雇用者(パート社員・契約社員・派遣社員)の増加も止まらない。男性の平均では1999年では10%を超え、2006年には16.7%に達している。女性の平均では2004年以降、半数を超えるに至っている。特に男女とも15~24歳の若者の非正規比率が急激に高まっており、いわゆるフリーターの増加を裏付けている。

 このような非正規雇用者の雇用契約では契約書を交わす事は少数で、口約束ということが非常に多い。雇用契約が不備な状態での就労は、不当解雇や賃金・残業の未払いや雇用に関わる紛争が発生したとき等、雇用条件を巡り双方の主張が大きく食い違い、解決が長引く要因にもなっている。
 JAMの労働相談も、概ね非正規雇用者からのもので、雇用契約書を交わしていないケースが大部分だが、迅速な解決に向け少しでもお役に立てればと、電話がかかってくる度に緊張している。


10.雇用形態の違いで労働条件の差別は
              どこまで許されるのか
 
  嶋田 労働相談員
 相談も色々である。板前修業中の21歳の若者が上司に叱られて仕事を辞めたいという、自分のその年齢の頃を思い浮かべながら若者に電話で「もう少し頑張りなさい」と話したが頑張っているのだろうか。

 子供を抱えながら働いているお母さんの未払い賃金の交渉をやった。労働基準監督署の指導、小額裁判の判決も支払いを命じているが会社は払わず、強制執行に備えて預金口座は空っぽ、会社の物品から社長の住居までリースという状態、賃金取り立ては不調に終わった。

 国会の予算委員会で派遣法を巡る悪質な雇用の実態が漸く議論になってきた。社会問題として課題になって来たことは良い事である。

 私の受けた相談に有名な派遣会社から派遣された女性の訴えがある。派遣先のA社が委託されたもう一つのB社の業務を行い、業務指示はB社が行っていると言うものであった。A社は派遣を通じて利益を上げるトンネル会社であり労働者は二重に搾取されている事になる。

 雇用形態の違いで労働条件の差別はどこまで許されるのか、労働運動は問われている。

9.「会社の専務」実際は普通の従業員
森成 労働相談員
 会社の役員だったという方から退職金について相談を受けました。
◎相談者 私は10数人が働く小さな会社の専務でした。30年勤め65歳で定年退職しましたが、もらった退職金はわずか200万円。もう少し何とかならないものでしょうか?

相談員 ここは労働組合なので会社役員の相談はできませんが、顧問弁護士にどうか聞いてみましょう。
顧問弁護士 小さい会社なので、おそらく役員退職金規定はないのではないですか?この種の相談は山ほどありますが、規定も契約書もないと難しいですね。

相談員 退職金規定はないのですね?
◎相談者 規定はありません。あちこちに相談したのですが全部断られました。何とかお願いできないでしょうか?
相談員 「会社の専務」とは、中小企業のため表向きの名ばかりで、実際は普通の従業員、一労働者だったのではないですか?
◎相談者 その通りです。
▼相談員 会社の役員会や総会に参加したことはありますか?また、その議事録等はありますか?
◎相談者 総会に参加したこともないし、議事録を見たこともありません。
相談員 お聞きしたところ、あなたは一労働者ですね。JAMでは個人加盟もでき、JAMの組合員になれば、団体交渉を申し入れし、交渉にも同席しますが、どうしますか?
◎相談者 個人加盟しますので、ぜひお願いします。

 後日、相談者はJAMに個人加盟。団体交渉を申し入れ、会社の弁護士立会いの下、交渉の結果、退職金は200万円から500万円になり、円満解決しました。

8.9ヶ月間で130件の相談
7人の労働相談員
 2005年の10月20日からスタートした「JAM労働相談ダイヤル」は、約9ヵ月間で130件を超える相談が寄せられ、個人加盟ユニオンには10人が加入した。相談は、解雇、賃金・退職金の未払い、長時間労働やメンタルヘルスなど様々な分野におよび相談者は非正規労働者が多い。

 労働相談には7人の相談員が交代で対応し、これからもJAMの社会的責任や組織拡大、増大する個別労使紛争に労働者の立場に立って、対応を進めていくことにしている。

7.働く者を守る法律が 知られていない
板橋 労働相談員
 2006年5月から労働相談を担当し、午前10時から午後5時までだが、昼休みも受付けている。1日1~3件と件数は少ないが、労働者が直面している様々な問題が寄せられ、特に不当解雇問題や賃金、長時間労働、残業の未払い等の相談が多い。

 例えば、過去2ヵ月間の相談の中では「お客様とのトラブルから、上司に明日から出てこなくてもいい、と言われて一週間休んでいる」「明らかに労災と分かっているのだが、休業中の賃金が未払いになっている」「怪我をして2日休業し、会社に出たら解雇を通告され、それまで働いた5日間の賃金も支払ってくれない」「朝9時から夜10時過ぎまで働いているが、残業代は支払われていない」等々、いずれも労働組合の無い会社で働く人たちで、労働基準法をはじめとする労働法制に対する知識がほとんど無い。

 これらの相談には、相談者の話を十分に聞き、労働基準法に基づいてアドバイスし、上司や人事・労務部門の担当者と十分に話し合うことを勧めている。場合によっては、団体交渉の場に同席したり、東京都労働委員会へ足を運んだりすることもある。

 二次産業から三次産業へとシフトしてきた現在の労働環境のなか、組織率の低下と相まって、労働組合のある組織労働者には当然の労使対等の原則と、労働組合の価値さえ知らない未組織労働者が大幅に増加している。このことを労働相談に携わって切実に感じる昨今である。

6.ルール無視の対応が横行
藤井 労働相談員
 2006年1月より電話労働相談ダイヤルを担当することになった。経験が浅いので、ベテランの労働相談員の方々と協議しながら対応している。
 最近の労働相談の状況は、働く条件、賃金や労働時間についての相談が多く、小規模の会社で勤務している労働者からの相談が多い。
 企業としても、ますます厳しくなるグローバル大競争時代の中で生き残ることに必死になっていることは理解できるが、あまりにも働くことについてのルールを無視した対応が横行しているように思える。

 労使が順調なときは、何も問題はないのだが、ひとたび労使の関係がこじれると、労働者の立場が非常に危うくなる。「もう、明日から出てこなくていいとか言われて休んでいる。どうしたらよいか」といった相談であったりする。そして、会社に就業規則があるのか、ないのかもわからなく何が悪いのかもわからない。こうしたときは本人とよく話をし、会社と団体交渉を持つことも行っている。

 こうした相談のほとんどが労働組合のない会社で働く人々。一人で悩まず、仲間と手を組んで、労働組合を作り、会社に物申す。このことが民主的労働運動の原点である、労働組合を作ることは、法律で認められており、働く者の権利だ。

 労働組合の組織率低下が問題となっている昨今、こうした困っている労働者を支援し、組合づくりも行っていくことが益々必要な時期と思う。
 JAM地方組織対策部との連携を密にして対応していきたい。
5.弱い立場の人たちの問題解決に努力
山口 労働相談員
  労働問題にかかわる相談窓口は産業別労働組合が開設したものや、国の機関である労働厚生省や東京都の労働経済局などがあります。さらに、紛争解決の行政機関として東京都労働委員会や今年の四月からは労働審判制度が始まりました。

 JAMの労働相談ダイヤルへの相談は切羽詰まった相談から、愚痴を聞いて欲しいというものまでさまざま。内容も不当解雇や賃金・残業の未払い、労働条件の一方的な切り下げなど、幅広い相談が持ち込まれてきます。

 個別労使紛争の多くは中小零細企業や個人商店の労働者からのものが多く、入社時に労働契約書を交わすことは少ないため、会社との交渉時に双方の主張が食い違い、長引く要因にもなっています。

 労働相談員の役割は、相談内容から的確に問題点を探り出して、1)アドバイスだけで済むもの、2)組合に加入してもらい団体交渉で解決するもの、3)さらに、東京都労働委員会の場に斡旋や不当労働行為救済で申立てするもの----などで、迅速な解決に向けて取り組んでいます。

 労働組合の社会的役割と責任が問われている昨今ですが、JAM労働相談が弱い立場の人たちの問題解決に向けて責任が果たせれば幸いと、週一回の労働相談に担当の一人として努力しています。
4.顧問弁護団の支援や助言を受けながら
小柳 労働相談員
 2005年の9月から、私が担当した事案で、簡単な質問程度の問い合わせを除くと、比較的深刻な問題は30件あまりに至っている。その特徴としては、第一に中小零細企業の労使間の問題が多いこと、第二に特定の職種に内在する問題が顕在化していること、第三に非典型労働者に問題発生が多いこと、第四に女性からの相談が比較的に多いことと同時に、最初から不当な扱いに対して闘う姿勢を明確に示すことが特徴と言える。

 解決に向けた具体的な活動としては、個人加入ユニオンへの加盟を前提として、団体交渉による不当労働行為の撤回や改善、都の労働委員会への働きかけによる解決、面談による適切なアドバイスによる打開などがある。週1回の電話相談から派生した上記局面への対応で多忙な日程となることもある。この間、JAM中央顧問弁護団の支援や助言が不可欠であることは言うまでもない。

 最近話題となったフランスの「若者雇用促進政策」が撤回された経緯をみると、拙速な法律の内容はともかく、若者の情報ネットワークへの参画が日常化している現実を踏まえ、JAM電話相談ダイヤルが、さらに機能を充実していくための方策もJAMの今後の課題と言える。
3.時には団体交渉や労働委員会にも
森成 労働相談員
 JAM東京で労働相談を始めて4年が経ったとき、東京でやっていた労働相談をJAM本部で引き継ぐということになった。2005年の10月からJAM本部で「労働相談ダイヤル」としてスタートし、現在OB6人が、週一回ずつローテーションを組んで対応している。
 労働相談は、単なる電話相談だけでなく、ときには団体交渉に、またあるときには東京都の労働委員会に足を運んだりと、けっこういろんな相談を受けている。

 バブル経済崩壊後社会情勢の急激な変化によって、労働関係民事紛争が非常に多発し、そのほとんどが、個別労働紛争である。
 こうした背景から、国は2006年4月1日から労働審判制度をスタートさせ、これらに即した迅速・適正かつ実効ある解決を行なうことを目的として、まったく新しい労働審判制度を設けた。

 しかし、労働審判制度の申し立て手続きについては、代理人(弁護士)を立てなければならず、費用もかかるため、なかなか一般の労働者にはなじまないのではないかと思う。

 やっぱり、簡単で気軽に相談ができて、お金もそんなにかからず(相談は無料。電話代のみ)、しかも、迅速適確に対応する。そして労働相談の達人がいるJAMの労働相談ダイヤルが一番ではないかと思う。
2.大半は不当労働行為
糸賀 労働相談員
 従来の管理職に加え、取締役の相談参入があり、階層の広がりと労働者性の変化の兆候を感じる。寄せられる相談は、経営の行き詰まり、合理化、労災、労働条件、上司問題などなど、労働者が直面している様々な問題であり、内容に軽重の差異はあるが、ほとんどが不当労働行為といえる内容である。

 これらの問題の起因は、雇用者が経営規範として重視すべき労働法制に対する認識の欠如と、労働者従属の不条理な古い主従意識による労務管理にあるといえる。このような環境の下で、理不尽な処遇に泣き寝入りし、矛盾と不安に向き合いながら働いている労働者が数多く潜在している現実がある。顕著化している個別労使紛争はまさにこれらの公然化現象の一部だ。

 労使対等を原則とする労働組合の存在は、使用者の一方的不当な労務政策行為を抑制し、紛争実態の解決機能をもっている。労働組合の組織化と個人の組織への結集は、労働者層の多極化の中で、必然的に重要性が高まる環境にある。労働組合の拡大を意識し、組織化を働きかけながら、相談に微力を尽していきたいと思っている。
1.労働組合だけが守る
嶋田 労働相談員
 資本主義(市場経済)社会では労働者が企業と対等の立場で自らの働き方や賃金を決定できないから法律で労働者の働き方を規制し、企業と対等に労働諸条件の交渉をできるように労働組合の結成を擁護している。

 労働相談を担当していると、私たちにとっては全く当たり前である冒頭の言葉が浮かんでくる。それは労働運動が働き方に不満や不安をもっている労働者の期待に応えきれていないことからと、労働者が労働組合の価値に気づいていない二つの側面に出くわすことが多いからである。前者についてここで論ずるつもりはないが、労働者は労働組合の価値にもっと気付かなければいけない。紛争は法律に基づいて労働者の権利を擁護してくれるものと思い込んでいたら半分は正しいが後の半分は間違いである。労使間のあらゆる種類の紛争を正しく解決できるのは労働組合だけなのである。

 労使関係の周辺で50年近く仕事をしてきたが改めて労働組合の重要性と価値を感じている。