本日、2010年3月14日日曜日、30を越えるオーストラリアの労働組合、地域団体は貿易大臣に対して申し入れを行い、3月15日から始まる環太平洋経済連携協定(TPP)交渉の中で、医薬品給付制度、国内産メディアの保護、遺伝子操作食品の規制、外国投資規制、国内雇用を保護する産業政策を守るよう要請した。
以下がその共同申し入れの内容である。
オーストラリア政府は米国、チリ、ペルー、ブルネイ、ニュージーランド、ベトナムとの環太平洋経済連携協定の交渉に携わっており、その目的は米国がこの5カ国と締結している二国間協定を基礎として多国間協定を結ぶことである。これによりオーストラリア米国自由貿易協定で議論された全ての課題が再登場することになる。
2003年から2004年に掛けてハワード政権はオーストラリア米国自由貿易協定を交渉した。米国政府と企業は以下のオーストラリアの政策を貿易への障害だとして自由貿易協定の中で取り除くか変更することを要求した。
○ オーストラリア国民に手ごろな価格の医薬品の提供を保障している医薬品給付制度の価格規制
○ 遺伝子操作食品のラベル表示
○ 映画、テレビなどのオーディオ・ビジュアル・メディアの国産規制
○ 外国投資評価委員会
○ 検疫法令
○ 政府調達での国内業者優遇
さらに米国政府は投資家と政府との間の紛争解決手続きを定めて、米国企業がオーストラリアの環境などの公益保護法により投資上の損害を受けたことを理由にオーストラリア政府に損害賠償を請求する権利を与えようとした。米国の企業は北米自由貿易協定(NAFTA)のこの手続きを利用してカナダ政府とメキシコ政府に対して何百万ドルもの損害請求を行った。
この米国の戦略に対して地域からの強い反対があった。というのは、健康、環境、社会文化政策は民主的な議会手続きにより決定されるべきもので、貿易協定の中で秘密裏に売り渡されてはならないと信じているからである。
この地域から反対運動は功を奏した。投資家と政府との間の紛争解決手続きは設けられず、
遺伝子操作食品のラベル表示に変更はなく、医薬品給付制度と国内産メディアの保護についてはわずかな変更だけに留まった。
またオーストラリア米国自由貿易協定は非常に弱い労働・環境条項しか持っておらず、国際労働機関(ILO)の基準に基づいていなかった。
TPPの意味するところはオーストラリア米国自由貿易協定から排除した事項が全て再度交渉議題になるということである。米国の経営者団体から提出された意見書によると、上で述べてほとんどの事項についての政策変更と、投資家と政府との間の紛争解決手続きの制定を実現するためにTPP交渉を利用しようとしていることが明らかである。
オーストラリア政府はTPPを通じて米国の農業市場への参加を促進しようと、言っているが、その見返りに医薬品給付制度の一層の改悪などの政策変更が求められる危険性がある。
TPP交渉において以下の原則を守ることを政府に要請する。
○ 手ごろな価格の医薬品の提供を保障している医薬品給付制度の一層の改悪を許さない。
○ 外国企業にオーストラリア政府を訴える特別の権利を与えることになる投資家と政府との間の紛争解決手続きを設けないこと。
○ 遺伝子操作食品のラベル表示と遺伝子操作穀物を規制する権利をその暫定措置を含め全面的に守ること。
○ オーディオ・ビジュアル・メディアの国産規制を守る政府権限を今以上に弱めないこと。
○ 外国投資評価委員会と外国投資を公共利益の観点から評価するその権限を保つこと。
○ 検疫法令を弱めないこと。
○ 政府調達での国内業者優遇と国内雇用を保護する産業政策を遂行する能力を低下させないこと。
○ ILO条約の中核的労働基準を遵守することを締結国に義務付ける強い労働条項を設け、その違反に対しては貿易上の制裁を課すこと。
○ 国連の環境協定を含む国際的な環境基準を締結国に義務付ける強い環境条項を設け、その違反に対しては貿易上の制裁を課すこと。