ニュージーランド労働組合評議会(NZCTU)は
環太平洋経済提携協定(TPP)の交渉について
重大な懸念を表明する

 ニュージーランド労働組合評議会(NZCTU)は今週の月曜日からオークランド市で次の交渉会議が予定されている環太平洋経済提携協定(TPP)交渉の方向性について非常に懸念している。NZCTUなどの労働組合の代表は交渉を見守るためにオークランドに滞在する。ニュージーランド以外に交渉に参加するのはアメリカを筆頭に、オーストラリア、ブルネイ、チリ、マレーシア、ペルー、シンガポール、ベトナムである。

 NZCTUからのオブザーバーとして参加するエコノミストでNZCTU政策局長ビル・ローゼンバーグは次のように述べている。
「この交渉の中で貿易はほんの一部を占めるだけだ。提案されている合意事項には、海外投資のルール、外国企業がわが国政府を訴える易くする方策、国内サービスを一層国際競争にさらす方策、規制の権限、医薬品の価格、知的財産権、国内企業育成のために政府調達を行うことを禁止する方策などが含まれている。

 ニュージーランドにとって最大の貿易上の関心は農業であり、米国への乳製品などの輸出を拡大することである。しかし、米国の利害は強大であり、これに徹底して抵抗するであろう。オーストラリアの輸出に携わる人々は米国との自由貿易協定の結果について大変不満であった。ニュージーランドがオーストラリアより有利にできると考えるのは間違いだ。もし仮に米国市場への参入が勝ち取れたとしても、その実施は数十年後に先送りされ、その間に米国市場での他の供給者との競争が激化するし、米国の補助金制度も継続されているかも知れない。」

 ローゼンバーグは米国市場への参入はタダでは手に入らない、と指摘する。「わが国はその代償を支払うことになる。それは例えば、外国からの投資を規制する権限が縮小され、わが国政府に何百万ドルもの損害賠償を請求したり法律を変えるよう求める権限を外国企業に与え、医薬品の価格が高騰し、国内企業を援助する能力を一層失い、民営化への圧力が高まることかも知れない。農産品の輸出を拡大するために国家主権を奪われるのなら、このように低付加価値商品の製造に特化することがニュージーランド国民の望んでいる未来なのか問わなければならない。それは低価値の、低品質の、低賃金への道である。」

 また、労働組合は労働権条項の実現を求めることにより、ワーナー社の要請によりニュージーランド政府が雇用関係法を修正したように(NZCTU「環太平洋経済提携協定 その懸念の理由」月刊JAM2011年8月号所収 参照)、労働条件を下に向けた競争により切り下げることを防がなければならない。「これらの貿易協定は国際企業権益を優遇し過ぎている。貿易協定は最低でも、成人人口の過半数を占め生活のために働いている人々の権利を守ることは保障しなければならない。

 さらにもっと問題なのは、この交渉の結果が議会で決まる国内法よりも重大な影響力があるのにもかかわらず、その交渉が秘密に包まれていることである。協定が合意されるまでは、協定の文言は検討したくても入手できない。ほんの部分的な情報しか入手できない。21世紀の貿易協定をこのような方法で作ってはならない。

 我々は貿易に反対しているのではない。貿易により雇用が生まれるが、貿易は公正なものでなければならない。しかし、これまで貿易は労働者にとって公正なものではなかった。しかも環太平洋経済提携協定は貿易以外の事項を含んでいる。貿易による利益はとるに足らない。先に述べたような危険はないと保障されない限り、環太平洋経済提携協定に反対である。我々は、環太平洋経済提携協定参加国の大半のナショナルセンターと協力しており、広い範囲の課題に関して共通の認識を持っている。」

 ローゼンバーグは交渉を傍聴するために12月6日ら8日にかけてオークランドに滞在する予定であり、取材に対応できる。

             2010年5月12日