今年の大会は、中間年の大会ではございますが、私にとっては、JAMの会長を引き受けて5年目の大会で、一つの区切りの大会と思っております。従って少し過去を振り返りながら、ご挨拶をさせていただきます。
会長を引き受けた時は、JAMの多くの単組がリストラの嵐の渦中にあり、雇用対策本部が設置されて雇用問題を中心とした取り組みの真っ最中で、極めて厳しい環境のときでありました。また、JAMが結成されて以降、幾つかの改革が積み残された中で、前任者の服部会長から2代目の会長として引き受けさせていただきました。
その当時の環境は、当初の予想をはるかに超える厳しい状況であったと思います。2001年以降始まったリストラでは47万人組合員が5年間で37万に迄減少するという厳しいものでありました。
JAM結成時の方針は、50万人の組合員を60万人に拡大しようというのが、基本的な方針でしたが、基本的方針とは裏腹に、2001年以降は、毎年2万を超える組合員が減少をするという状況で財政にも大きな影響を与えるほどのものでした。しかしながら、当年度収入で当年度支出をまかなうという、今流行の言葉で言えばプライマリバランスを意識した財政改革によって何とかこの難局を乗り越えることができました。
この数年間の厳しい状況を切り抜けることができたのは、皆様方のご協力を得て成し遂げた財政改革のおかげであるとつくづく思います。
このような環境の厳しい中で、会長を引き受けたときに大きく3つの改革を目指して、この4年間取り組んで参りました。三つの改革とは、
これらの三つの改革を図ることが、労働運動の環境が大きく変化する中でJAMに課せられた最大の課題と考えて邁進してきました。@労働環境が大きく変化する中で、JAMの特徴を生かした組織改革
A一刻も早くリストラを解消し、組織拡大への路線を図る
B大手の春闘が大きな変化を起こす中で、中小が大手に依存しない新たな春闘改革
労働運動をとりまく環境が大きく変化する中で、その環境変化を的確に捉えて改革を行うため、組織・財政委員会にお願いした諮問に対する答申が、昨年の定期大会で確認した「基本構想」です。
そのなかで、JAMは「単組役員と専従者が支える地方活動が基軸となった産業別組織」であることが明確に位置づけられました。日本では産別運営は大きく二つに分類されます。一つは、企業の系列を中心とした産別運営で、代表的には自動車総連や電機連合等があげられます。もう一つは企業系列とは異なり地方組織を中心とした産別運営で、代表的にはJAMやUIゼンセン同盟がこれに当たります。両者の違いは、中小企業を多く抱えた産別かどうかということです。そして、中小労組を多く抱えたJAMでは、世話役活動と組織拡大要員として多くの専従者(プロパー)を必要とし、専従者が重要な存在となっています。
「基本構想」ではJAM本部・地方JAM・単組のそれぞれの問題点と「改革の基本的な課題」が示され、本部機構と地方JAMの組織改革の方向性が提起されました。
その内容は、
- JAM本部においては、組織体制と機能を抜本的に見直し、@単組ニーズの水準にあった対策指針などをスピーディに提供する機能の実現、A組織強化・拡大のための業務効率化と体制づくり。
- 地方JAMにおいては、地方JAMの再編も視野に入れた機構の抜本的改革を行い、@単組の支援・指導機能の強化、A組織強化・拡大のための体制づくり。
- 上記@Aを進めることによる財政運営の改善。
- これらを実現するための専従者の再配置。
の4点です。
組織・財政委員会は、本部機構の大規模な改革を推進しましたし、本部作業委員会は、地方組織再編の見通しがつけられるところまで調整を行ってきました。専従者の再配置や人事制度改革についても、総務委員会で検討が進められています。
これは同時にJAM本部と地方JAM運営に携わる専従者自身にも、新しいJAM組織にむけた改革のために、自らの意識改革を求めています。
本大会で、これらの具体的な内容を提案し、本部および地方改革について確認をお願いしたいと思っております。
会長を引き受けた時は、折しもリストラの真っ只中で、組織拡大に力を傾注する時期ではありませんでした。しかし2004年以降リストラも終息し、本格的な組織拡大を図る取り組みを開始しました。当時は、主に全国オルグが組織拡大の役割を担うという体制になっており、地方書記長を始めプロパーの多くは組織拡大を経験しておらず、日常活動も構成単組のフォローが中心でした。そこで、OJTによる実践教育形式の実務者勉強会をスタートさせました。今年で3年目を迎えますが、この2年間で20名の参加者のうち13名の方が、何らかの形で組織拡大実績を上げました。今後はメンバーを入れ替えて、組織拡大未経験のプロパーは実務者会議に出席し、自ら組織化の実績をあげてもらう事を中心として、組織化のノウハウを体得することとします。
また、昨年から斉藤副会長を担当三役として地方の組織拡大の活性化に力を入れてきました。徐々にではありますが、地方でも組織拡大の実績が出始めてきています。
特に昨年度は、初めて50単組5000名という数値目標を明確にして、組織拡大に向けて積極的に活動してきました。結果として、37単組3,360名の実績を上げることができました。数年前は、組織拡大の単組数よりも解散離脱組合の数が大幅に上回っていたことを考えると、やっと組織拡大に向けた意識が高まってきたと思います。実務者の実績も評価に値しますが、地方においても積極的な拡大が見え始めました。
従来から組織拡大に力点が置かれていた静岡や大阪をはじめとして、東京、千葉、富山、滋賀、九州・山口等では積極的に組織拡大活動が展開されました。
その一方で残念ながら、一人書記長の地方をはじめとして幾つかの地方では未だに実績が伴っておりません。実績の上がっていない地方は、来年度は一つでも組織拡大をするという信念を見せていただきたいと思います。
引き続き50単組5000名を目標として、今年は確実にこれらの目標をクリアーする組織拡大の達成をお願いしたいと思います。
組織拡大についてもう一つの視点は、派遣・請負労働者の組織化問題です。ここ数年議論してきましたが、派遣・請負労働者の組織化は、簡単にできるものではないことが、はっきりとしてきました。
一般的に、従来からものづくり産業においては、非正規労働者は、繁忙期と閑散期の生産調整要員として、一方では軽易な作業を行う要員として、非正規労働者の中でもパートを中心に20%〜25%程度の要員が確保されていました。従って、非正規労働者の組織化という概念が薄く殆どの組合で非正規社員の組織化がされていませんでした。
今年度の活動の中で、産業政策の一環として派遣・請負労働者のものづくり職場に与える影響について調査してきました。8月に中間報告書が出ましたが、この調査結果から判断すると、ものづくり職場(生産部門)では従来のパートに代わって請負労働者が圧倒的に多く使われていることが判明しました。大手・中堅企業を中心として40%(組合員比率)以上の派遣・請負労働者が職場に配置され、その数は拡大の方向にあることもわかりました。生産現場の組合員数との比率では、過半数を超えていると推測されます。実際に組合員比率で、過半数を超える派遣・請負労働者を抱える企業も数多く、労働者を代表する組合とは言い難い単組も存在することも判明しました。特に、ものづくりの現場では、派遣・請負労働者の内、請負労働者が圧倒的に多く、法的に見ればグレーゾーンの請負労働者を使っているところも多く存在することがわかりました。技能・技術の継承という点から見れば、技能・技術の継承が必要な職場に請負労働者が多く存在することも明らかになっております。
一方において、ものづくりに理解のある経営者の中には、技能・技術を継承するために、派遣・請負労働者の数を制限している企業も多々あります。ただ残念なことに、労働組合側に派遣・請負に対して関心の薄い単組も多く見受けられます。また、本部への問い合わせでは、どのようにすれば法を逃れることができるかいうものもあると聞いております。
最近、派遣・請負労働者の実態について違法性があるという指摘をしたマスコミ報道がありました。加えて、厚生労働省でも社員化に向けて厳しいチェックが強化され始めました。
このような状況を踏まえて、労働組合として、今一度、改正労働者派遣法の主旨に沿って、経営側との協議を行っていくべきだと思います。特に、技能・技術の継承を重視してきたJAMとしては、技能・技術の継承が必要な職場には、確実に正社員を配置させる等の協議を重視したいと思います。
また、外部から指摘を受けるということではなく労働組合自らが、企業のコンプライアンスやCSRという視点からチェックをするという事も重要な役割だと思います。社員化に向けた話し合いが必要であろうと思います。
是非、労使協議の遡上に載せて可能な限り社員化、即ち、組合員の拡大に向けた議論を強めて頂きたいと思います。
1976年(昭和51年)以来、日本の春闘は、金属労協(JC)を中心とした経済整合性論による春闘、JC共闘を中心とする賃金決定方式が定着し、中堅・中小労組がそれに続くというかたちが長年続いてきました。
しかし21世紀に入って、JC共闘は大きな変化を起こしてきました。JC共闘の中心であった鉄鋼労連(現在は基幹労連)は隔年闘争に移行し、電機連合は産業の大きな構造変化から、賃金要求を断念し定昇を中心とした体系維持分の確保へ傾斜していきました。
また、鉄鋼・電機に代わって主役の座はトヨタに移り、トヨタの労使交渉が大きな影響力を与えるようになりましたが、2002年、日本経団連の強い指導の下、1兆円の利益を計上したにもかかわらずベアゼロの交渉に終わったため、2002年春闘は多くの中小労組で賃上げゼロに押さえ込まれました。また、デフレスパイラルの影響を受け、賃金カットも多くの中小労組で行われるようになりました。結果として大手労組は体系維持分確保、中小労組は賃上げゼロの構図が出来上がり賃金の二極化が起こりました。
また一時金交渉では、デジタル方式という業績連動型の交渉方式が導入され、中小にとってはとても追随できない交渉形態に変化したため、一時金においても大手と中小との間に大きな格差が生じました。
賃金の二極化に歯止めをかけるためには、JC共闘を中心とした大手労組依存の賃金決定システムから脱皮し、中小労組の目安となる要求基準を構築することが必要です。こうした認識で、連合傘下の中小労組を多く抱えた産別に呼びかけて、本格的な中小共闘体制の構築にJAMは奔走しました。
2004年の春闘で、連合の中小共闘として要求基準を作成し、旗揚げを行いました。中小の春闘は、JAMやUIゼンセン同盟のように産別の賃上げ水準に影響力を受ける場合もありますが、一方で地場産業の賃上げ水準にも影響力があることを踏まえて、2005年には地方連合に呼びかけて連合地方共闘の立ち上げをお願いしました。
中小共闘の立ち上げを呼びかけてから3年目を迎えた2006年の春闘では、連合中小共闘は、連合傘下の中小を多く抱えた産別共闘と地場産業を中心とした地方共闘で一定の成果を挙げることができるようになったと自負しております。
2006年の春闘は、マスコミでは5年ぶりのJC春闘として大手を中心としたJC共闘が持てはやされましたが、結果は、従来のような社会的影響力は行使できず、大きく後退する結果となりました。
JAMはこのような変化に対応するために、JC登録組合を回答指定日に確実に回答が引き出せる単組を中心として再登録を行い、中小労組への相乗効果を狙いとした共闘体制を構築しました。登録頂いた10単組の奮闘によって、JAM傘下の中小労組にも大きな影響力を与える春闘が構築できたと考えています。
またこのことが、JCおよび連合でも高く評価され、新しい春闘の再構築の先鞭をつける結果となった思います。
2006年春闘終了後JCおよび連合では、来年の春闘構築に向けて積極的な議論が展開されております。基幹労連は隔年闘争の中間年になりますので、春闘は取り組みません。電機連合では今年の春闘の結果を踏まえて、おおくくりの職種別賃金要求が検討されております。同時に17単組による交渉形態の見直しも議論されております。トヨタ労組は、今年の交渉結果から要求を見送るのではないかと見られています。このような状況を踏まえてJC共闘は、おおくくり職種別賃金を前提として、規模別水準要求を模索し、幅広い共闘体制を検討中です。
一方連合では、トヨタ労組の交渉で日本の賃金が大きく影響される構図を解消するために、連合の中小を抱えた産別を中心とした連合の共闘体制構築が検討されています。具体的には連合は従来、春闘は産別自決を原則としてきましたが、JC共闘が大きな変化を見せる中で、連合傘下の中小を多く抱えた民間労組を中心に、大手・中堅労組を基軸とした共闘体制の構築が模索されております。
JAMは、これらの動きに積極的に参加する立場で、JCおよび連合の新しい共闘体制構築に向けて積極的に参加をしたいと思います。
来年4月には統一地方選挙、7月には参議院選挙が行われます。地方選挙と参議院選挙が重なるのは12年に一回といわれております。来年は選挙の年といっても過言ではないと思います。
統一地方選挙では、JAM議員団の中で66名の方が対象となります。まずは4月の統一地方選挙に向けて改選議員の全員当選を果たしたいと考えています。
一方7月の参議院選挙は、労働界にとっては極めて重要な選挙となります。特に小泉政権になって、「強いものはより強く、弱者は切捨て」という風潮が横行し社会の格差拡大が進みました。正規社員と非正規社員の格差、大手企業と中小企業の格差、首都圏と地方の格差をはじめあらゆるところで格差が拡大しております。
また同時に、国の財政破綻からサラリーマンをターゲットにした増税が、重くのしかかってきております。加えて社会保障面では、低福祉・高負担の社会保障制度が進行しております。また社会保険庁に代表されるような行為には目に余るものがあります。このような多くの矛盾をはらんだ自公連立政権では、ますます勤労者の環境は悪化の一途をたどるばかりです。このような政治を改革するには、自民・民主二大政党による政権交代以外に方法はないと思います。
そのような点から見れば、来年の参議院選挙は政権交代を求める最大のチャンスといえます。まずは、参議院選挙で自公連立政権を過半数割れに追い込み、その後の衆議院解散で野党を中心とした連立政権をつくることによって、民主党を中心とした政権を誕生させることをめざします。
従って連合をはじめ労働界にとっては、極めて重要な参議院選挙といえます。力の限り、まずは、民主党の拡大に向けて最大限の努力を傾注しなければならないと思います。
その上でJAMは来年の参議院選挙では、他産別候補の支援を決定しました。三年ごとの参議院選挙には必ず候補者を擁立したいと考えていますが、残念ながら現在の組合員数と財政的規模からいって、三年ごとの擁立は困難と判断しました。
従って来年の参議院では、ものづくり産業の中で我々の産業に環境が似かよっている基幹労連の「とどろき利治」氏を支援することを決定しました。本大会で確認をお願いしたいと思います。
今回の参議院選挙は、単に基幹労連の「とどろき利治」氏を支援するということではありません。2010年の参議院選挙では、「津田やたろう」の再選に向けた取り組みを行わなければなりません。来年の参議院選挙は、津田選挙に結びつく選挙を行いたいと思っています。
2004年選挙では、「津田やたろう」を擁立して、組織内の徹底した掘り起しを行いましたが、来年の参議院選挙では、紹介カードの枚数よりも如何に選挙に弱い単組の取り組みを行うかが重要なポイントと考えております。
そして、2010年の参議院選挙では、JAM単独でも「津田やたろう」の再選が可能な体制を構築したいと思います。そのために、2010年に繋がる参議院選挙の体制と取り組みをそれぞれの地方または、単組で考えていただきたいと思います。
以上縷々申し上げましたが、意のあるところをお汲み取り頂き大会議論の参考にして頂きたいと思います。