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JAM2010年春季生活闘争方針大綱
日本経済は、家計の低迷を脱し得ないまま一昨年より景気の後退局面に入り、昨年秋の世界同時不況から外需の縮小にも襲われ、以来、未曾有の困難に陥っている。今、労働組合は、労働者の雇用と生活を守ることを通じ、この社会の根底を支えていかなければならない局面を迎えている。連合は「日本経済・社会の底割れに歯止めをかけ、賃金水準の低下を阻止し、労働者の生活を維持、防衛する観点から」、2010年春季生活闘争の取り組みを強力に展開するとしている。JAMもまたその呼びかけに応えなければならない。そうした観点に立って、JAMの2010年春季生活闘争方針大綱を以下の通りとする。
Ⅰ.情勢の特徴について
1.【日本経済全体】7-9月期の実質GDP成長率は、輸出が増加基調を続けたことに加え、設備投資が増加に転じ、季調済前期比で+1.2%(年率+4.8%)と拡大、内需の寄与も6四半期ぶりにプラスとなった。しかし内需増加の半分は在庫によるものであり、個人消費も景気刺激策に支えられている側面が強く、先行きの懸念は払拭されていない。
2.【企業動向】主要場企業の2010年3月期の決算は、製造業全体で下期に黒字転換、通期でも黒字が予想されている。金属関係では、金属製品、機械、電気機器、輸送用機器、精密機器の何れも下期に黒字転換、通期でも黒字転換または赤字幅縮小が見込まれる。但し、売上の大幅減少下で、人件費、購買費の圧縮・見直しによる利益確保の動きが強まっており、雇用・所得環境と中小企業への悪影響が懸念される。日銀短観(9月調査)による業況判断では、大企業製造業のDI(-33)は6月調査から改善した。生産、輸出に持ち直しがみられ、企業の経営環境は、大手製造業を中心に底を脱しつつあるが、中小企業製造業の景況感の戻りは鈍く、売上・収益計画をみても、差が広がっている。
3.【雇用情勢】9月の完全失業率(5.3%)、完全失業者数も352万人、何れも2ヶ月連続で減少しているが、水準は依然として高い。9月の有効求人倍率(0.43、前月比+0.01)は、28ヶ月ぶりに改善したが、高校新卒者の就職内定率(9月末現在)は37.6%(前年比-13.4)に止まり、企業の雇用過剰感は引き続き強く、非正規労働者も減少が続いている。
4.【勤労者の生活】全国消費者物価指数(総合)は8月に過去最大の下げ幅(前年比-2.4)を付け、9月も-2.2%、2月以来8ヶ月連続で前年水準を下回った。個人消費など内需不振による大幅な受給ギャップ、所得環境の悪化による消費者の低価格志向等により、消費者物価の低下傾向は強まっている。他方、物価水準そのものは、景気回復過程の2005年と同程度であり、購入頻度の高い生活必需品や教育費は今でも2005年水準を上回っている。家計の消費支出は、各種の政策効果に底支えされているが、雇用・所得環境の悪化から横バイに推移している。物価下落によって実質ベースでは微減、名目では4ヶ月連続でマイナス、現在の消費水準は一昨年をも相当下回っている。
Ⅱ.基本的なスタンス
1.連合方針(基本構想)に則り、日本経済の底割れに歯止めをかけ、
①内外需のバランスの取れた経済への転換
②マクロの配分バランスの実現
③正規・非正規の処遇バランスの実現
――を期すために、雇用を守ること、賃金水準の低下を阻止することを最優先し、さらにワーク・ライフ・バランスの観点からの労働時間に関する取り組み、非正規労働者に対する処遇改善を追求する。
2.企業状況に十分な注意をはらい、労働組合として雇用を確保していくための取り組みを行うために、経営情報の開示、労使協議の場の確保と徹底をはかる。JAM本部と地方JAMの連携を強め、雇用対策本部の活動を継続する。
3.すべての単組で、以下の5点について取り組む。
【要求し回答を求める課題】
(1)賃金構造維持分の確保
(2)企業内最低賃金協定の締結
(3)時間外割増率の引き上げ
【継続または開始すべき課題】
(4)機械金属産業における人材の確保・育成に向けた、賃金実態の把握と分析に基づく賃金制度・カーブ確立に向けた検討の実施。30歳または35歳の個別賃金水準の開示の促進
(5)年次有給休暇取得促進運動、総実労働時間の短縮
Ⅲ.具体的な要求
1.賃上げ要求
(1)個別賃金要求
標準労働者要求基準またはJAM一人前ミニマム基準への到達を基本として、個別賃金絶対額水準を重視した賃金の底上げをはかる。
①標準労働者要求基準を次の通りとする。
②JAM一人前ミニマム基準を、次の通りとする。
③各単組で、30歳または35歳における個別賃金水準の開示に努める。
(2)賃金構造維持分の確保
①賃金制度のあるところでは賃金構造維持分を確保する。
②賃金制度はないが、賃金実態の把握に基づいて推計できる場合は、その相当分を要求し、確保する。
③賃金制度がなく、賃金構造維持分の推計も出来ない場合は、次の平均賃上げ要求を行う。
平均賃上げ要求基準
4,500円以上
(3)賃金の改善・是正について
連合・JCの方針を踏まえ、必要に応じて、人材確保のために、初任給の引き上げ、賃金分布の偏り・歪み等に対し、構造維持分を確保した上で、500円以上の改善・是正を要求として組み立てること。
(4)賃金制度の確立または賃金カーブの整備に向けた取り組み
まず賃金実態を把握すること。それを踏まえて、18歳初任者賃金を出発点に、一定の勤続年数を重ねた一定の年齢ポイントにおいて、目指すべき賃金水準を検討し、その実現に向けた期間、原資等を労使で協議する取り組みを行うこと。
(5)賃金について何らかの要求提出を
すべての単組は、①賃金構造維持分の確保②各種の改善・是正等③実施されている賃金の凍結や減額に関する期限の明示や解除に向けた協議等――賃金に関する何らかの要求を提出し、労使交渉、労使協議に臨むこととする。
参考:2008年・2009年春季生活闘争における賃金構造維持分
2.企業内最低賃金協定
企業内最低賃金協定基準を次の通りとする。
(1)企業内最低賃金協定を締結していない単組では、
①18歳以上最賃協定
②全従業員最賃協定
③年齢別最賃協定の何れかについて、
協定の締結を要求する。
(2)協定金額に関する基準を次の通りとする。
①18歳正規労働者月例賃金を、所定労働時間で割戻した時間額。
②上記の算定が困難な場合は、時間額900円に、2009年度地域別最低賃金全国加重平均713円に対する各都道府県最低賃金の比を乗じた額。
156,000円×12カ月÷(365日÷7日×40時間)=897.5円→900円
要求時間額=900円×当該都道府県最低賃金÷713円
※上記の換算により、昨年基準を下回る県については要求基準を据え置く。
※18歳未満の労働者に対する適用ルールについては別途定めるものとする。
③年齢別最低賃金協定基準を下表の通りとする。
※JAM一人前ミニマムの18歳基準から35歳以下の各ポイントについて、JAM一人前ミニマムの80%を基準とする
参考:春季生活闘争・企業内最賃の状況①
。
参考:春季生活闘争・企業内最賃の状況②
3.一時金要求
生活水準を維持する観点を重視し、要求基準を次の通りとするが、個々の企業状況への対応を含む取り組みは、単組毎の対応に拠ることとする。
(1)年間5カ月基準または半期2.5カ月基準の要求とする。
(2)最低到達基準として、年間4カ月または半期2カ月とする。
4.労働時間に関する取り組み
法法定時間外割増率の引き上げへの対応及び労働時間については、企業体質の強化及びワーク・ライフ・バランスを実現していく観点から、以下の通り取り組む。
(1)法定時間外割増率の引き上げは、制度の趣旨として時間外労働を抑制するものであることを重視し、2009年労働協約に関する取り組み方針に基づく取り組みを継続する。
休日労働時間を含む月45時間を超える時間外割増率は50%への到達を目指し、それが25%になっている場合は、最低でも25%を超えたものとする。
(2)ワーク・ライフ・バランスを実現していく職場環境整備の一環として、年休取得促進運動を重視し、取り組みの継続と開始をはかる。
(3)労働時間の短縮は、企業体質の強化と一体であることを踏まえ、総実労働時間の短縮に向けた取り組みの継続と開始をはかる。年間2000時間を超えた所定労働時間については、中長期的な課題として短縮に向けた取り組みを開始する。
5.非正規労働者に対する処遇の改善
直雇用の非正規労働者に対する、賃金、安全衛生、育児・介護等の処遇・雇用環境等に関する何らかの改善を検討し、実現をはかる。また、派遣労働者については、派遣契約の内容、労働条件、派遣元における社会保険の加入有無など、「派遣労働者の受け入れに関する協定基準」に準じた点検活動を強化する。
6.男女間の賃金格差問題
男女間の賃金格差問題については、「男女間賃金格差問題に関するまとめ」に基づき、全組合員の賃金実態の把握と分析を進める中で、男女間賃金格差を是正していく取り組みを、継続的に進めていく(右表は2009年主要単組アンケート結果)。
7.労働協約に関する取り組み
「2009年労働協約に関する取り組み方針」に基づき、以下の項目について継続して取り組む。
(1)裁判員制度に掛かる特別有給休暇制度の導入
(2)税制適格年金制度廃止に対応した退職金・企業年金制度の整備
(3)育児介護休業法改正による、満3歳迄の育児短縮勤務制度の義務化に伴う、同制度の導入・確立(改正法の施行は遅くとも2010年6月末、ガイドライン、施行規則等の確定を待って、改めて対応方針を策定)
(4)改正次世代育成支援対策推進法における一般事業主行動計画の公表と従業員への周知及び策定・届出が次の通り義務化されるに伴い、労働組合も一般事業主行動計画の策定に関わっていく取り組みの強化
Ⅳ.政策・制度要求について(別紙<略>)
Ⅴ.取り組み方と日程について
1.準備期間
地方JAM・地協においては、春季生活闘争中央討論集会以降12月から2月第1週までに、役員と専従役職員が一緒に、各単組を訪問し、企業状況と賃金実態を把握した上で、統一要求日の要求提出に向けて、次のような指導を行う。
(1)賃金実態の把握により、JAM一人前ミニマム、標準者要求基準に基づく、個別賃金水準を基本とした取り組みについて、最低でも30歳、35歳の現行、要求、回答水準の表示が出来るよう単組への指導を強める。賃金実態の把握が十分でない場合は、賃金実態の把握に向けた態勢整備をはかりながら、①賃金実態の分析に基づく賃金構造維持分相当分の確保②賃金の改善・是正③賃金制度の確立または賃金カーブの整備に向けた取り組み――等を指導する。
(2)時間外割増率をはじめとする労働時間の実態を把握し、重点課題に沿った要求の組み立てを指導する。
(3)要求検討段階前に、企業状況の把握を徹底する。その上で、賃金に関する何らかの要求提出を指導し、雇用問題が発生しているような状態、雇用確保を最優先せざるを得ないと判断される単組については、地協・地方JAM・JAM本部と連携した取り組みを行う。
2.闘争体制
(1)2010年春季生活闘争は、大変厳しい経済環境の下での取り組みであり、統一要求日における要求提出を重視し、その実行に全力をあげる。
(2)統一回答指定日における回答引き出しに全力をあげる体制を強化し、3月月内解決に向けた取り組みを強める。地方JAMは闘争委員会を設置し、地協・地方JAM内の相互交流・情報交換を行う体制を強化すると共に、要求・回答・個別賃金水準等に関する情報集約体制を整える。
(3)JAMは、第15回中央委員会終了後ただちに、中央執行委員会構成員で構成する中央闘争委員会を設置する。
(4)要求実現の手段として有効に活用するとの立場から、ストライキ権については、従来の労使関係を考慮しつつ確立する。
(5)産別間の共闘に対する参加体制を次の通りとし、JAM本部は、大手労組会議、業種別部会、地方JAMと連携して以下の3グループをエントリーする。A・B ・Cグループのエントリー基準と日程配置については、連合・JCの今後の共闘方針に基づいて調整する。
Aグループ:JAMの大手・業種を代表し、統一回答日においてJAM相場の牽引役となる単組
Bグループ:Aグループに準じた役割を担う単組
Cグループ:地場・中小の相場形成に影響力を発揮し得る単組
※JC共闘及び連合の部門別共闘
Aグループ
有志共闘
A・Bグループ
JC中堅・中小共闘
B・Cグループ
(6)大手労組会議は、大手労組間の情報交換を密にすると共に、その情報をJAM全体で共有する。
(7)業種別部会は、情報の交流を密にし、部会の体制強化をはかる。
(8)JAM本部は、地方JAM、大手労組会議、業種別部会と連携し、情報活動に関する体制を整える。
(9)JAM本部は、各方面からの情報集約に基づいて、統一回答日の前段に、統一回答日に向けた取り組みについて示達を発する。
3.日程
(1)統一要求日 2月 日(火):全単組がこの日までに要求を提出する。
(2)統一回答指定日を次の通りとし、全単組が回答の引き出しに全力をあげる。
3月 日(火)、3月 日(水)
(3)統一交渉ゾーン
1.第1次統一交渉ゾーン= 月 日の週 企業の短期、中期の見通しについて交渉する。
2.第2次統一交渉ゾーン= 月 日の週 要求に対する統一回答指定日における回答確約を目指す。
(4)中小の山場と3月段階の取り組み
連合の「中小共闘」方針の確定をまって、それに則した取り組みを行う。
4.4月段階の取り組み
(1)ヤマ場を含めた具体的な日程と取り組みについては、それまでの情報集約に基づき、全国委員長・書記長会議へ提案し決定する。
(2)4月ヤマ場においては少なくともストライキ権を確立し、職場集会などの具体的な行動を起こすことによって解決をはかる。具体的な行動を開始するための基準は中央闘争委員会において設定し、中央闘争委員会および地方JAM闘争委員会の指導の下に行動する。
(3)決着が4月以降となった場合、地方JAM役員が直接交渉する旨の文書を4月1日付けで使用者側へ送付し、4月ヤマ場での解決ができなかった場合には、単組交渉に地方JAMの役員が出席し、交渉を促進する。
5.一時金を別交渉として取り組む単組の日程
一時金を春季生活闘争と切り離して別途取り組む単組は、本方針の要求内容に準じて、一時金の取り組み日程を次の通りとする。
要求日
5月 日(木)
回答指定日 6月 日(木)
以 上